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素材への旅

編む美しさをめぐる〈ARABESQUE〉20年の歩み

2026.04.20
編む美しさをめぐる〈ARABESQUE〉20年の歩み

今年設立20周年を迎えるSIRI SIRIが、ブランド立ち上げ当初から大切にしてきた手法の一つに編むことがあります。〈ARABESQUE〉と名づけたコレクションは、籐、麻、銀糸といった素材を編み上げた、ジュエリーやバッグがラインナップしています。2026SSに新たに仲間入りした籐のクラッチバッグまで、デザイナーの岡本菜穂がそのデザイン変遷を振り返ります。


〈ARABESQUE〉の起点は、SIRI SIRI誕生時まで遡ります。立体感のあるフォルムが特徴の「Bangle 1」と水引を想起させる「Earrings 1」がファーストコレクションとして登場しました。どちらも籐を編んだ特徴的なフォルムが、ブランドの登場を強く印象付ける存在に。金属以外の天然素材で作られたプレシャスなジュエリーとして、新しい価値をもたらしました。

フォルムを追求した「Bangle 1」

ARABESQUE Bangle 1

ARABESQUE Bagnle 1

「はじめて作ったものが『Bangle 1』です。元々、剣持勇の有名な作品のひとつに籐を使った椅子のシリーズがあり、私は大好きでした。そのフォルムのように、籐を平面ではなく立体的に編み上げた作品ができないものかと考えて、自ら作りはじめたのがきっかけです。私がインテリアの世界で働いていたことから、収納用のバスケットなど籐は日常的で馴染みのある素材でしたし、それがジュエリーになっていたら素敵だと考えて、手を動かし始めたことを覚えています」

岡本は、自ら作った「Bangle 1」と「Earrings 1」のプロトタイプを持って、ラタンアートスクールを訪れました。近くを通りかかった時に、ラタンによる作品が高く積み上げられている光景を目にして、籐製のジュエリー制作の協力を依頼しました。

ARABESQUE Earrings 1

ARABESQUE Earrings 1

「本当に幸運だったのですが、ラタンアートスクールを運営していた代表の真木雅子さんは、籐工芸を日本に広めた第一人者の方でした。私のサンプルに興味を持ってくださり、ラタンアートの先生をされていた岡安康子さんをはじめ、熟練の技術を持つ講師の方々がSIRI SIRIの制作を引き受けてくださることになりました」

ARABESQUE Earrings 2

ARABESQUE Earrings 2

「Bangle 1」は、縦と横を編み合わせていく素編みと呼ばれるシンプルな手法で、彫刻的で立体感のあるアウトラインを描き出しています。また「Earrings 1&2」は、水引のあわじ結びに着想を得て、岡本が考案した編み方で出来上がっています。そして、あわじ結びを連続させることで、まさにアラベスク模様のような華やかな雰囲気をもつ「Bangle 2」も加わりました。

ARABESQUE Bangle 2

ARABESQUE Bangle 2

銀糸を編んだ3つのジュエリー

〈ARABESQUE〉に新しいジュエリーが加わったのは、「Bangle 2」から数年が経過した頃。ともに制作してきた岡安さんの工房で、編み方や素材について話している中で生まれました。銀糸を用いたバングルとピアス、そしてチョーカーです。

ARABESQUE Bracelet SV

ARABESQUE Bracelet SV

ARABESQUE Earrings HOOP SV mini

ARABESQUE Earrings HOOP SV mini

「素材への探究心があったので、籐以外のものを探していた時に出合ったのが銀糸。触り心地が柔らかくてとても上品な輝きに惹きつけられました。岡安さんに編み方のアイディアをいただき、レースのような繊細な佇まいに仕上げることができました」

ARABESQUE Choker HOOP SV

ARABESQUE Choker HOOP SV

バッグ制作への挑戦

そして、ジュエリーコレクションに籐と銀糸のバリエーションが広がったのち、岡本が手がけたものがバスケットでした。そもそも籐は、インテリア雑貨として広く用いられているので、SIRI SIRIらしい表現のバッグ制作へと関心が向くのは自然の流れだったと岡本は振り返ります。今回も実現に向けて共に試行錯誤をしてくださったのは、岡安さんでした。

ARABESQUE Basket L BEIGE

ARABESQUE Basket L

「工房で見せていただいた資料の中に、昔のヨーロッパ各国で使われていたバスケットコレクションをまとめた本があったんです。そこに、ヒップバスケットと呼ばれる形が載っていました。伝統的なヒップバスケットは、かご全体が編み上げられているのですが、岡安さんと共に編み方を工夫し、SIRI SIRI独自の見せ方を追求しました。その結果、私たちは大胆にシースルーに編み上げた本体と、ライナーとして布を入れることで、籐とのコントラストが印象的なデザインへと行き着いたんです」

ARABESQUE Basket S BLACK

ARABESQUE Basket S

籐とガラスを組み合わす

バスケットの誕生と同じタイミングで、〈ARABESQUE〉では初となるヘアアクセサリーにも挑戦。岡本は、SIRI SIRIを代表する素材となった籐とガラスを組み合わせることを試みました。

「以前から籐とガラスの組み合わせ自体が、とても美しいと思っていたので、形にできたことは純粋に嬉しかったですね。急須や土瓶のつる(持ち手)に、耐熱や補強のために、くるくると籐や紐が巻きつけられていますよね。形状として可愛いと思っていましたし、異なる素材が一つの役割に集約された実用性のあるデザインということで、ヘアアクセサリーと通じる部分を感じ、ベースのイメージになりました」

ARABESQUE Hair Tie CLEAR

ARABESQUE Hair Tie CLEAR

受け継がれる手仕事、新たなかたち

そして、2019年には、竹工芸のような細やかな和の佇まいを感じさせる縦型の籐のトートバッグが登場し、その後2024年に横型のトート、2026SSにクラッチと同じエッセンスを引き継ぐコレクションが揃いました。

Tote Bag

CINEMA JAPONESQUE Tote Bag

「椅子の座面や背もたれに使う籐で作られた四つ目編みのシートがあるのですが、その意匠をバッグに転換したことで、新鮮な見え方になっていると思います。繊細な印象の中に、補強の飾り編みもデザインの一部として取り入れ、トートバッグはマチをたっぷりと、クラッチバッグも立体的に仕上げることで、美しさと使い心地を備えています」

Tote Bag S

CINEMA JAPONESQUE Tote Bag S

縦型のバッグは、長年岡本と共に〈ARABESQUE〉を作ってきた岡安さんが、職人を引退なさる前の最後の開発となりました。その後〈ARABESQUE〉コレクションの制作は栃木のちくげい工房に所属する竹細工職人の方々や、岡安さんのところで学ばれていた後藤小百合さんへと引き継がれています。

Hira Clutch Bag

ARABESQUE Hira Clutch Bag

編むことにフォーカスした〈ARABESQUE〉の魅力を、いま改めて岡本はデザイナーとして感じることがあると語ります。

「SIRI SIRIのコレクションの中でも、実際に手を動かさないとデザインしきれないのが〈ARABESQUE〉です。編むことで予期せぬ厚みが出たり、素材の特性で描ける曲線に制限があるなど最初に思い描いた形になるのか、やってみないとわからない部分が多くあり、平面図だけで完成させることができないんです。裏を返せば、作り手の手触りが残っているデザインだと言い換えることができるでしょう。今の時代、それは貴重なことであると同時に、手を動かして物を作ることがデザイナーの基本ではないでしょうか。私はジュエリーという身につけるものを作っているので、人の手を通して生み出すことは、これからも大切にしたいと考えています」

〈ARABESQUE〉は新作へのご期待をいただくことが多い、SIRI SIRIらしさを存分に楽しんでいただけるコレクションです。岡本の情熱を受け止めてくださった職人の方々に支えられ、また一つ未来へと紡がれていきます。

→ARABESQUE Collection


文 佐々木 彩

編む美しさをめぐる〈ARABESQUE〉20年の歩み

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