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Interview

Bienvenue Studios Interview

2021.05.19
Bienvenue Studios Interview

スイス、チューリッヒを拠点とするデザイン・ユニット〈Bienvenue Studios〉。自然からのインスピレーションを元に、Xiaoqun WuとOliver Hischierが生み出すグラフィックデザインは、スイスならではの自然の造形への敬意や手触りへの丁寧な視点で知られています。スイスを拠点に活動するSIRI SIRIデザイナー岡本菜穂との交流から、2021年4月には初めてのコラボレーション商品もリリースしました。印刷技法や紙にもこだわりを持つ彼らの制作のコンセプトについて、話を聞きました。

深井佐和子(以下深井):こんにちは!元気ですか?チューリッヒの街の様子はどうですか?

Oliver & Wu(Bienvenue Studios):こんにちは!こちらの状況はだいぶ改善してきたと思います。先週から街中のショップもオープンして、レストランもテラスでの営業が始まりました。街に活気が戻ってきています。

深井:5月のスイスの美しさは格別ですよね。ロックダウンの間はどのように過ごしていましたか? Oliver:突然手にしたたくさんの時間をうまく使うように心がけていましたが、僕たちはアートワークの他にクライアントワークも手がけていますので、シーン全体が止まっていたことは事実です。でも今再び動き出した気配を感じています。

深井:なるほど。今回、SIRI SIRIとBienvenue Studios による初めてのコラボレーションとなるスカーフを発表し、同時にBienvenue Studiosのプリント作品を東京・赤坂のSIRI SIRI直営店で展示しています。先日のIGTVでも少しだけお伺いしましたが、改めて今日はお二人の制作についてお話を聞かせてください。まずはデザイン・コンセプトとして掲げている「バイオフィリック・デザイン」について。ピッタリの日本語訳も見当たらず、まだあまり馴染みのない言葉ですよね。

Oliver:ヨーロッパでも比較的新しい単語だと思います。必ず説明を求められるので。大学院で研究している間に出会った言葉で、自然体系の一部として「人間には生まれ持って自然とのつながりを求める本能がある」とする仮説です。すでに多くのリサーチがこの「バイオフィリック」について行われています。シンプルにいうと、人々が自然に囲まれていると気分が良くなり生産性が向上するという説です。建築や空間デザインなどでも水や植物などを利用する計画などで実用化がされています。僕たちはそれをどのようにグラフィックに落とし込むかを実験・検証しています。石や草木などグラフィックで描かれている対象のみならず、色、素材、テクスチャー、そのような要素で自然を感じる心理的効果を生み出すことは可能なのか。

深井:なるほど。その自然観は、日本の建築やデザインにも通じるところがあるなと今聞いていて思いました。古典建築においても光や自然の情景を一部として用いることが一般的です。お二人は日本を度々訪れていらっしゃって、日本文化への造詣も深いですよね。いつから日本に興味を抱いていたのですか?

Oliver:いつからだろう...気がついたら日本への憧れを持っていました。ジブリ映画をたくさん見ていたせいもあるかもしれません。映画で見る建物も、庭園も、全てスイスと違う。初めて日本を旅行したときはまるで夢の国に来たようでしたね。想像していたものに実際に触れ、感じることができて感激しました。また日本国内の様々な場所を旅行するうち、日本の建築やデザインが、例えば長屋のようなコミュニティハウスがあったり、直島などでは集落の家の形を揃えることで風の流れをコントロールし自然の冷却システムを生み出すなど、土地の自然と寄り添って暮らしてきたことに感動しました。

深井:Wuさんはどうですか?

Wu:子供の頃からずっと絵やアートに興味はありましたし、日本文化は上海で育った私にとって親しみがあるものでした。「ちびまる子ちゃん」などのアニメも日常的に見ていましたし。日本と中国の美学には共通点も多いですよね。色彩感覚、空間や余白の使い方。そこへの美の感じ方。これってロジカルなものというよりは経験に基づいた感覚的なものですし、ある種の言語なのだと思います。 深井:なるほど。私もジブリは大好きですが、その特異性の一つとしてどの作品にもアニミスティックな考えが通底しており、自然は恐ろしいものとして畏怖を込めて描かれています。だからこそ美しさや想像を超えた体験が主人公に降りかかる。

Oliver:ジブリにあるのは自然への圧倒的な尊敬ですよね。

深井:このアニミズム的な自然観は日本人や中国人にとって親しみがありますが、ヨーロッパの自然観とはだいぶ違うな、と私はヨーロッパに住んでいる時に実感していました。お二人は自然とはどのような関係を持っていますか?どのように自然からインスピレーションを受けるのでしょうか?

Wu:中国は巨大で、都市部も大きいので上海では自然を感じたかったら、かなり計画的に旅行しなくてはなりません。子供の頃は私は海も山も見ませんでしたし、公園といっても、いわゆる遊具がある人工の都市型公園しかありませんでした。でもここに越してきてからは1時間もかからずにすぐに湖や山に行くことができて、友人とハイキングをして料理をしたり、自然を楽しむことができる。とても平和だし、たくさんのエネルギーを感じることができます。

Oliver:僕は子供の頃はいつも山の中にいたのでそれが当たり前だと思っていたのですが、大人になり都市に暮らすようになると自然を渇望する気持ちが湧いてきました。それでもチューリッヒは毎日の暮らしの中でも自然を感じる機会があります。それぞれの家庭もガーデニングが普通ですし、建物や地域全体で植生を生かしたデザインが行われています。例えば荒廃したエリアでも長期的な視点で緑化していくことにより昆虫や鳥の生息地が増えたりと、感動的な情景に出会えます。

深井:なるほど。チューリッヒでは常に自然を身近に感じることができるライフスタイルが可能なんですね。それがお二人のインスピレーション源にもなっているし、それは、お二人がグラフィックデザインを通じて、人々に自然を身近に感じてもらいたい、自然との繋がりに目を向けてほしいと願うコンセプトにも通じるんですね。人は自然の一部だから。

Oliver:そうですね。自然が悲しんでいるから救ってください、と声高に叫ぶのではなく、僕たちの作品を通じて自然そのものの美しさにハッと、自然をリスペストし、好きになってくれることが目標です。

深井:サステナビリティは常に創造性の一部ですものね。

Oliver:そうですね。ここ数年で意識改革はだいぶ前進しているのではないでしょうか?一歩一歩ですが、現代の私たちの気づきが後から見たら大きな変化になってくるのだと思います。

深井:話を作品に戻しましょう。作品は丹念なリサーチに基づいていますね。

Wu:そうですね。旅先でも日常でも、インスピレーションはさまざまなところから湧きますが、それを裏付けるようにリサーチを徹底的に行います。制作の過程で美術館もよく行きますね。モチーフそのものの多様性について調べたり、同じような自然から着想した作品を見たり、それに関するリサーチを参照したりします。

Oliver:リサーチを通して多様性を表現することは、僕たちのデザインにとって重要です。だから僕たちのSmall Print Collectionは常に一種につき複数のグラフィックを用いているんです。蝶もカブトムシも石も、ふたつとして同じものはないからです。特に僕は元々小さな頃から動植物に興味があり、生物学者になるかデザイナーになるか迷ったほどだったので、動植物と人間の調和には強い関心があるんです。

深井:モチーフや作品に特徴的な色、そして作品の詩的なタイトルも素敵ですね。

Wu:リサーチの過程でそれらの要素が決まってくるんです。特に色はデザインと同じくらい重要ですね。モチーフごとに決めていて、色そのものが自体が意味やストーリーを持っています。色ひとつとっても、例えば政治的な意味だったり、肌の色や警告などある種の記号になっている色を選ぶなど、数え切れないほどテストをするんです。タイトルは...なるべく詩的にしようと努めています(笑)

Oliver:たくさんのシリーズの中には、僕たちは個人的にすごく好きだけどそれほど人気がないシリーズなんていうのも存在するんですが、好かれるものではなく自分の中で好きなもの、良いと思えるものを発信することはとても重要だと思っています。

Wu:SIRI SIRIの(岡本)菜穂が、心の底から良いと思えるものを生み出せば、それはずっと生き続けると言っていて、そこに強く共感しています。作ったシリーズが10年後も20年後も良いと思える、それが私たちの目標です。

深井:素晴らしいデザインはいつもとても個人的なものだと思うんです。またこのようにものが飽和していて、マーケティングされている現代において、知っている誰か、信頼する人がデザインするものを身につける、目にすることの精神的効果は計り知れないと思います。 ああ、本当に日本に来て欲しかったです!でもいつか、また日本でファンの皆さんに会える時が来ますね。それまでにまたコラボレーションをきっとしましょう!

インタビュー&執筆:深井佐和子(SIRI SIRIディレクター)

Bienvenue Studios
Xiaoqun WuとOliver Hischierからなるデザイン・ユニット〈Bienvenue Studios〉はチューリッヒを拠点に自然からのインスピレーションを大切にグラフィックデザインを生み出しています。印刷技法や紙にもこだわりを持ち、自然の造形への敬意や手触りへの丁寧な視点をもとに数々の美しい製品を生み出す

協力:PAPIER LABO. , Onoda

 

2021年4月〈Bienvenue Studios〉とSIRI SIRI初のコラボレーションとしてシルクスカーフ2種を発売。

Bienvenue Studios × SIRI SIRI Scarf PRAYING HANDS

Bienvenue Studios × SIRI SIRI Scarf GENTLE KNIFE

発売を記念し、SIRI SIRI赤坂直営店内にて~5月30日(日)まで〈Bienvenue Studios〉の作品の展示・販売を開催中です。フレーム入りオリジナル・プリントや作品集など多くのアイテムをご覧いただけます。また、Bienvenue Studios × onodaによる、大阪南部にある工房で独自の製織法により作られているオーガニックコットン100%のタオルもSIRI SIRIパッケージにて展示開催期間のみ限定販売いたします。ぜひお楽しみください。

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