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素材への旅

透明な鎖を身にまとう、その強さ

2020.04.30
透明な鎖を身にまとう、その強さ

人はその古来から、装いを重要な営みのひとつとしてきました。装身具、すなわちジュエリーの歴史は古く、その中でもネックレスは紀元前3000年頃古代エジプト時代にはすでに誕生していたという記録があります。日本でも、古墳時代には翡翠や水晶などを用いたネックレスを、お守りとして男女問わず身につけていたと言われています。後に貴族文化が発展するとともに、女性が宝飾品としてきらびやかなネックレスを着用することが一般的になりました。その原始から、ネックレスは権力や身分の象徴であると同時に、豊かさを願い、また自らを守るものとして存在していたのです。

2010年に誕生したSIRI SIRIのCHAIN NECKLACEは、透明なガラスと色ガラスを組み合わせ、バーナーワークを用いて日本の職人が一つ一つ手で仕上げる、文字通りガラスの鎖をモチーフとしたネックレスです。ひときわ目立つその存在感と上品な魅力がこれまでに高い評価を得ており、2016年には皇后陛下・雅子様が那須へお出かけの際にお召しになられた他、キャロライン・ケネディ元駐日米国大使も過去にご着用されるなどしてきました。

つなぎ目のないつるりとしたガラスのパーツが連なったこの美しい鎖は、一体どのように生まれるのでしょう。
CHAIN NECKLACEのチェーンは、職人による熟練の技で一つ一つのパーツを熱しながら接合する技術を用いています。熱と素材を自在に操り、まさに瞬間をとらえる技が、美しい鎖を生み出します。

SNOWAVOCADOMARBLE、そしてJADEという微妙な色のニュアンスがまるで水彩画が描かれるように連なっていくグラデーションの4色のバリエーションは、一つ一つのパーツの色をデザイナーが選び、そのシークエンスを職人に伝えることで生み出されます。若草や果物など自然を感じさせるような色合いは、太古植物を編んだ鎖がネックレスの起源だったことを彷彿とさせます。これら一つ一つの色は、様々な鉱物によって生み出されています。その鉱物の性質によって、ガラスの硬さも異なります。ベースとなる透明なガラスに色ガラスを塗り混ぜ、温度により変化する色をコントロールしながら、唯一無二のピースが仕上げられていきます。職人の繊細な手業が、デザイナーの発想を、形へと実現させていくのです。

CHAIN NECKLACEはガラス製品ではありますが、耐熱ガラスを用いているため日常使いが可能です。耐熱ガラスは10年前には工業以外に使用されることはほとんどなかったため、複雑な色の表現など、デザイナーと職人にとって多くの試行錯誤を要しました。しかし近年、バーナーワークが工業から工芸へと移行するなかで、多彩な色の表現がようやく可能になってきました。

NEW COLOR <JADE> 2020.04.29発売

ネックレスは、人間社会の変化や工業技術、そして美術という文化の発展にも伴って、時代時代で形を変えてきました。2020年現在、その起源から5,000年の時を経てようやく生み出されるCHAIN NECKLACE。ガラスの透明な鎖を身にまとうことで得られる強さと自信、それはネックレスが自らを守ってくれるものとして捉えてきた、人間の長い歴史の一端に私たちが立っていることを、想起させてくれるのです。

 

文  深井 佐和子

写真   伊丹 豪

透明な鎖を身にまとう、その強さ

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