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スイス・アーレ川の“青の濃淡”を、リサイクルガラスの照明に

スイス・アーレ川の“青の濃淡”を、リサイクルガラスの照明に

スイスのベルンに暮らし、大学院でデザインを学ぶ代表の岡本菜穂が、当地で好きな場所の一つがターコイズブルーに輝くアーレ川の風景だという。

スイスの首都ベルンは、旧市街が世界遺産にも指定されている中世の街並みが残る美しい街で、アーレ川はその旧市街を取り囲むように緩やかに蛇行する。ベルンの人たちは夏場ともなれば、川で水浴びをして涼を取る。ベルン市内には噴水もたくさんあり、生活のすぐ近くに川があり水があるのだ。

岡本もアーレ川とスイスの人々の生活の美しさやきらめきに惹かれ、いつしかその風景を一つの作品として表現してみたいと思うようになっていた。

岡本「夏は毎日のように川に行っていました。川に囲まれているだけでなく、街にはたくさんの噴水がありアルプスの水が飲み放題。水や川とすごく密接な生活をしてるのがベルンの人たちなんです。その川の美しさや、そこでの生活の輝きを一つの作品にしてみたいんです。」

 

出発点はローカルなものづくり

岡本のポリシーの一つに「関わりのあるところでものづくりをする」というものがある。いわゆる「ローカル」に由来するものづくりだ。大学院のデザイン科でソーシャルインパクトをテーマに学んでいる岡本は、このポリシーに基づいてベルンでのものづくりを考えた。

岡本「スイスと日本は美的リテラシーやデザインセンス、自然との共生の感覚、シンプルなものが好きなど共通する部分が多いので、スイスで地元の職人さんとものづくりしてもいいものができるだろうと思いました。」

ローカルでのものづくりはその土地の人々と一緒につくるだけでなく、その土地の風土や生活習慣に沿った形で進めることも大事になってくる。

ヨーロッパで暮らす中で岡本が感じたのは、環境への配慮が暮らしに浸透しているということだった。

岡本「リサイクルはもちろん、ビニール袋をあまり使わないとか、飛行機を普通には乗らないとか、ビオの野菜がスーパーに並んでいるとか、買い物は量り売りが基本だとか……。そういったことが当たり前で。環境にいいことをするのは意識が高いことではなく、普通のことなんです。」

そのような環境でものづくりをするとなると、自然とリサイクル素材へと目がいく。大学院でサステナビリティについても学んでいた岡本は、リサイクルガラスを使ったものづくりを考えた。


最初に思いついたのは、花瓶や器といった小物だった。SIRI SIRIには男性の顧客も多いが、そんな男性たちがSIRI SIRIをギフトにしようというときにジュエリーは意味合いが強いので、インテリアに使えるような小物をつくりたいという気持ちはずっと持っていたという。それを実現するために、地元の工房と協力してファーストサンプルを制作した。

 

ロックダウンが深めたデザインの構想

しかし、これから進めていこうという矢先、新型コロナウイルス感染症拡大によるロックダウンが起きる。リモートのやり取りではなかなかうまく行かず、ロックダウン明けまで作業を休んで待つことにし、その間に考えを深めてることにした。

その中で生まれたのが、照明の構想だった。

この構想のもとになったのは、ルイス・ポールセンの有名な照明「PH5」が生まれたストーリーだった。デンマークのデザイナー、ポール・ヘニグセンは自分が好きな夕刻の光を再現するために、その夕刻の光のルクスや角度を測り、それを再現するために形を計算し、シェードの内側を赤に、反射板を青に塗ったのだという

岡本「そういったものづくりが現代ではあまりされていないので、それくらいじっくりものづくりをしてみたいという思いがまずありました。それから、デザイナーが考えた主観的な感覚がこれから大切になっていくだろうと思うし、私も主観的な思いが入った表現をしていきたいと思っていて、今私が見ているきれいな景色を普段の暮らしの中で再現したいという気持ちが生まれました。」

 花瓶やお皿も日常の中に存在するものだが、照明は毎日そこに光が灯される。その灯された光がアーレ川の美しい景色を再現するなら、それは岡本の主観からみた景色がそれを使う人たちの日常に入り込んでいくことを意味する。

しかも、リサイクルガラスは岡本が照明で表現したいことに適していた。

岡本「リサイクルガラスには自然と気泡が入ります。なるべく素材に無理をさせないのが私の一つのデザインのやりかたでもあるし、私が表現したかった水の中のアブクや川の表面のきらめきくを表すのに、泡が入っていたほうが面白いとも思ったんです。」

ガラスの中に入る気泡を増やすために炭酸を混ぜてみたり、もともと色のついたガラスを材料に使ってみたり、さらに顔料を混ぜたりと試す中で、少しずつ構想が固まっていく。

岡本「湖を眺めているような深度を感じる作品にしたいと思い、ガラスに厚みを残した設計にしています。深度があるガラスの照明ってあまり見たことがないし、季節や時間帯によって変化するアーレ川の青の濃淡を、この技法で再現できないかと試しています。」

リサイクルガラスを通して生まれる光と影は、どのような風景をわたしたちの部屋に生み出してくれるのだろうか。


ライフスタイルまでデザインする

まだ完成していない照明だが、この照明は岡本の新たなプロジェクトの第一歩に過ぎないという。

岡本「ジュエリーも生活の一部ではありますが、もっとライフスタイル全体をデザインしたい思いがあって、今回のランプは、ジュエリーとは別の姉妹ブランドのような形で展開したいと考えています。」

そして、その先にあるのは「ウィークエンドハウスプロジェクト」だ。に拠点居住や週末用の別荘として使える家をまるごとプロデュースする、そんな計画を立てている。

岡本「スイスの生活で強く感じたのは、時間の使い方や自然との関わりの大切さです。日本の都市部に暮らす人たちも今回のステイホームの影響もあって意識するようになっていると思いますが、スイス人は以前から週末を自然の中で過ごすことを当たり前にやっています。それを日本でもできないかと思って。」

小屋より少し大きなサイズのオフグリットの家をデザインし、今回のリサイクルランプを始めとしたインテリアもデザインする。ものというよりも暮らし方そのものをデザインするようなプロジェクトが始まろうとしているのだ。

ヨーロッパの暮らしから生まれたアイデアが、わたしたちの暮らしをより豊かなものに変えてくれるかもしれない。

 

文 石村 研二