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SIRI SIRI ASSEMBLAGE は、 意外性を感じさせるマテリアルと伝統的な職人技術との組み合わせにより
コンテンポラリーな作品を発信するジュエリーブランド SIRI SIRI が発信するWEB MAGAZINE です。

岡本菜穂とフリーランスPR・枝比呂子が語る、SIRI SIRIの誕生とこれまでの軌跡

岡本菜穂とフリーランスPR・枝比呂子が語る、SIRI SIRIの誕生とこれまでの軌跡

SIRI SIRIを、10年以上見守ってきてくださっている方もたくさんいますが、その始まりを知る人はあまり多くはなさそうです。

20代だったデザイナーの岡本菜穂が立ち上げたSIRI SIRIが、その後どのように成長してきたのか。SIRI SIRI立ち上げのキーパーソンとも言えるフリーランスPRの枝比呂子さんをお招きし、ともに当時を振り返りました。

 

人との出会いや縁に支えられて

岡本:出会ってから、もう13年も経つんですよね。SIRI SIRIとして初めて出た東京・青山のspiralのアート系展示会で、最終日に枝さんが声をかけてくださったんです。

枝:たまたま、階段を上がった所に座っている岡本さんの姿を見たんです。「なんて透明感のある美人なの!」と気になって近寄ったら、小さなテーブルに彼女を鏡で映したかのような作品が、ポツリポツリと並んでいて。あまりにもすてきな世界観だったので、思わず話しかけたんです。でも、すごく人見知りだからか、終始あまり目を合わせてくれなかったよね。

岡本:そうでした? それは多分「バイヤーを紹介する」というお話があまりに突然で、よく理解できずに驚いていたのだと思います(笑)。

枝:じつはその展示には、特に作品探しで行ったわけでもなかったんです。当時はTOMORROWLANDやGALERIE VIEのPRとしてイベントの企画もしていたから、ネタがあると思ったのかも。今思えばきっと岡本さんと出会うためだったんでしょうね。

岡本:きっとそうですね。その後、現在もやりとりをさせていただいているバイヤーさんを紹介してくださって。

枝:そうそう。今みたいにスマホで記録する時代じゃないから、いただいたパンフレットを見せて「いいジュエリーブランドさんがあるから絶対会ったほうがいい」ってバイヤーに紹介したんです。薄紙に刷ったパンフレットもとても印象的だったから、よく覚えています。

岡本:ちなみに、そのパンフは今も保存してありますよ。

枝:そうそうこれ! 懐かしいね、13年ぶりに見ました。

岡本:24、5歳頃につくったものですが、もうSIRI SIRIのロゴも入っていますよね。この時は、切子のバングルやピアス、籐のバングルを出したんです。

 

デザイン活動から、バイヤーに見出されるまで

枝:少しずつアップデートはしているでしょうけど、当時のデザインが今も現役ってすごいですよね。ただ、バイヤーには当時「SIRI SIRIという世界観で見せたいから、もう少し品数が増えたらまた来て」と言われたって。

岡本:はい。でも、そんなに間を空けずに持っていきましたね。ただ、卸すと言われても値段がわからなくて、バイヤーさんの事務所で原価計算の方法を教えてもらいつつ、その場で値付けしたのを覚えています。5、6点だったかな。それから、TOMORROWLANDさんのイメージに合うのかという心配もじつはありました。ガラスジュエリーを扱うセレクトショップはまだなかったし、安全性やつけ方が想像できない商品を買ってくれるなんて、まだまったく考えられなかったんです。結果的に、その時は切子バングルとピアス、籐のピアスを複数購入してくださいました。自分にしては多い数で、どうやって揃えようかと困ってしまって。

枝:TOMORROWLANDは店舗数が多いからね。

岡本:そうなんです。制作をお願いしていた職人さんに相談すると、その数は難しいと。それで新たにガラス職人の八木原敏夫さん(八木原製作所代表)にお願いすることになったんです。その間にも、枝さんからプレスリリースを出してほしいと頼まれ、プレスリリース自体がわからなったので、教えてもらってなんとなく書いてみる、という作業をしましたね。でも、その時に書いたプレスリリースのコンセプトは、今のSIRI SIRIのWebサイトにある「about」とほぼ近い内容なんですよ。

枝:それは知らなかった! ご自宅へインタビューにも行かせてもらったよね。当時、ブログの担当でもあったから、作業されていたご自宅で資料や本の写真を撮りつつ、ブランドのコンセプトなどを伺ったんです。まだスタッフさんもいなくて、お一人でしたね。

岡本:そうですね。まだインテリア業界で働いていた頃です。

枝:出会った頃はそう言っていたよね。

岡本:はい。徐々にデザイン活動に移行したんですけど。

枝:いつの間にかGALERIE VIEでも取り扱いが始まっていて。

岡本:そうですね。こちらも仕組みをよく知らないままにお任せしたら……という。

枝:でも、最初がTOMORROWLANDだと大きいですよね。規模感や位置づけもわからなかったと思うけど、やっぱりそこに入っているのといないのでは次の一手が違いますから。

岡本:はい。社員さんもすてきな方が多くて、社内もゆったりしていて安心できました。そういう企業文化なのだと思いますが、友人のようにも接してくださって。その後、東京の代々木体育館で行われるroomsという合同展示会にも参加することになるんです。卸と直販の違いも知らず、言われたままに出ていたのですが。そういえば、私がお会いした頃の枝さんは入社何年目だったんですか?

枝:6年目くらいかな。いろいろ任されるようになって、自分が見つけたネタや物や人を引っ張ることができ始めた頃ですね。でも、私が紹介したことは関係なく、SIRI SIRIがTOMORROWLANDにぴったり合うと感じたから、バイヤーが選んだのだと思いますよ。他にもブランドを紹介したことがありますが、すんなりと行ったのは岡本さんくらいですから。作品性やものづくりの背景まで見て決めた結果なんでしょう、伸びしろしかないっていう。

岡本:ありがとうございます。じつはお店で扱っていただいたことで、勇気づけられたことがあって。その頃から、同じく卸をされているジュエリーデザイナーさんが、お店で見た商品を買ってくれるようになったんです。他のブランドってなかなか買わないものでしょうに、同業の方もガラスだからと、違うものとして捉えてくれて。一般に広まる前は、展示会でも出展者さんが買ってくれるようなプロに人気があるブランドになっていたんです。

枝:それは重要ですね。プロが知ってくれると広がりやすいから。

岡本:今、よくブランドの立ち上げ方を質問されるのですが、こうして振り返ってみると、考える前にやることがやはり大事だなと思いますね。

枝:確かにそうですね。私たちみたいな出会いもありますしね。


インテリア業界で培われた、職人への思い

岡本:最終的にTOMORROWLANDには何年在籍されたんですか。

枝:9年です。辞めてからもつながりはありますよね。私は、岡本さん自身をもっと露出すべきだって勝手に思っていたんです。だから、アタッシェ・ドゥ・プレスの会社に移ってからも、よさそうな企画があると何かとお誘いして。おこがましいですが、岡本さんとは一緒に成長してきた感覚があるんです。SIRI SIRIが伊勢丹でポップアップショップをひらいた時なんて、本当によかったねって泣けてきちゃったくらい。あれはいつでした?

岡本:初めてのポップアップは9年くらい前ですね。伊勢丹での展示も誘われるまま出た感じで。シフトの組み方も知らないから、休憩だけ伊勢丹の社員さんに代わってもらって、一週間、毎日一人で対応していました。

枝:今ならスタッフさんもいるのにね。

岡本:一人はさすがにもう無理ですね。じつはこの時、3日目くらいまではほぼ売れなかったんです。でも最終日の終了一時間前に、通りかかった海外の方が「右から左まで」って感じで買ってくれて。それでギリギリ売上目標近くまで達成できたんです。

枝:すごい! 岡本さんは節目節目で、いい人や出会いを得ているよね。

岡本:確かに、出会う人の引きは強いかも。出会ったみなさんに成長させてもらっています。

枝:私もSIRI SIRIのお仕事をしたことはないけど、担当していた別ブランドのカタログにモデルとして岡本さんに出てもらったこともあるし、定期的に会っている気がします。

岡本:そうですよね。枝さんが今着ておられるTHE YARDのPRをご担当されているのも不思議なご縁だなと。SIRI SIRIを昔から扱ってくれていた着物ブランドさんだったので。

枝:お世話になっています(笑)。でも以前、和のお店には置かないと言っていたと聞いたんだけど。

岡本:確かにそういうことも言っていました。そこは時代の流れが大きくて、SIRI SIRIを始めた頃は、一般に「日本のものよりヨーロッパのもののほうがいい」とされる傾向があったんです。だから背景をぼかす意図もあって。でも今はむしろ逆で、日本が魅力になる時代ですしね。

枝:その頃から伝統工芸の職人さんに目をつけていたのがすごい。もちろん、和だけじゃなく洗練されたデザイン性があったからこそ、ヨーロッパ志向だったTOMORROWLANDも買い付けたのだと思います。

岡本:インテリア業界では早くから職人さんとのコラボ商品をつくる流れがありました。ただ、その試みにみんなが慣れていなかったのか、つくっても販路を開拓しないことが多かったんです。販路開拓の責任の所在がデザイナーと職人の間で曖昧だったことにも憤りがあって、つくったものを売らないなんてつくり手が報われないと思ったことがベースにあるのだと思います。

当時のファッションやジュエリー業界はコンサバだったから、その頃も伝統技術を取り入れる流れはまだ来ていなかったですね。

枝:だから職人さんにお願いするのもすごく大変だったんでしょう。

岡本:でも、つくったら自分できちんと売りたいと思ったからこそ今があるというか。職人さんとコラボするなら、自分でブランドを持って自分の責任で売る。それを1つの道筋として立てられないかと考えていたので、値段のつけ方もわからないのに値段交渉はしていたんですよね。

枝:今はマーケティングしてものをつくる時代だから難しいよね。職人さんが入るのも珍しいことだし。

岡本:家具だとデザイナーと職人が別にいるのが普通で、デザインは同じでも職人さんによってアンティークになった時の価格が変わることがあるんです。椅子でも何百万円もの差が生まれることもあります。その手法なら、地位の向上まではいかなくとも誠実な対応ができるのではと思ったんです。

枝:インテリア業界から入ったからこそ、職人さんへの思いも強いんでしょうね。

岡本:私自身、ものをつくるのは好きでも美しく量産できるほうではないんですよね。だから、最初から職人さんにつくってもらうほうがいいと思っていたんです。

枝:でも、SIRI SIRIに量産ものという印象はないですよ。

岡本:どちらかというと着物に近い感覚ですね。数はできても、手でつくるからそこまでたくさんはできない、というくらいの量産が好きなんです。つくり手の視線から離れず、物になった時や売る時に遠すぎないものというか。


いつも新鮮であり続けること

枝:じつは今日、TOMORROWLANDのPR時代に初めて買ったレザーの切子バングルを持ってきたんです。今のものと較べてみたくて。デザインは、当時とほとんど変わらないのね。

岡本:ものによってはそうですね。でも、職人さんも何年も同じデザインをつくっていると技術が上がるんでしょうね。昔は卓越した技術をお持ちの職人さんでも出せなかったラインが、10年以上経って模型と近づいてきているんです。ほんのわずかに形が変わることもありますけど、私としては当時の理想に近づいているので嬉しいです。

枝:SIRI SIRIのジュエリーはたくさん持っているけど、今もつけられるデザインってすごいですよ。古臭くならず、いつもクリアで、いつも新鮮。私はやっぱりガラスの作品に惹かれますね。大きなガラストップのネックレス(TARO HORIUCHI x SIRI SIRI Necklace STONE CLEAR)や、TOMORROWLAND別注の、アラベスクのビーズ付バングルやピアスも現役です。

そうそう、5年ほど前にスクエアの切子ガラスピアスを買ったら、金属アレルギーの私にはつけられないポストがついていたんです。そのことを話したら、岡本さんとその当時のSIRI SIRIのマネージャーさんのはからいで、特別に金属を変更して、結婚祝いと言ってプレゼントしてくれて。今でも大事にして、ハレの日につけています。

岡本:そう言っていただけてうれしいです。

枝:SIRI SIRIの魅力を一言で表すのは難しいんですが、とにかく「飽きさせない」ところだなと思います。いつ見ても新鮮だし、昔のものを今見ても新鮮。新しい商品も毎回「こうきたか!」と感じさせてくれます。新しいことへの挑戦もそのひとつですが、ブランドは独自の価値観と思想をひもづけることが大切だと思うんです。そこを上手にやっているブランドは長く残っている気がしますね。そして今後、ものを売っていくには、ただかわいい、かっこいいだけでなく背景のストーリーも必要だと感じています。

その意味で岡本さんは、まさに独自の価値観と思想を紐付かせて新たな挑戦をされているし、普遍的な形から新しいデザインへと広がっていて、毎回まったく飽きさせない。素材のミックス感も上手で刺激になります。

やっぱり、SIRI SIRIが一番似合うのって岡本さんなんですよ。着けた時に説得力があるんです。だからこそ、あの時も岡本さん自身に惹きつけられたのかもしれないですね。たくさん海外で刺激を受けて、よりグローバルな女性になってほしいと思います。

岡本:ありがとうございます。この記事も、これから新しいブランドを始めたいという人や、ジュエリーデザイナーさんの刺激になればと思います。

枝:星の数ほどあるジュエリーブランドの中で、路面店を持てる人はごく僅か。こんな形で世界観を見せられるような場をつくるには、相当な努力とキャリアが必要だったと思います。だから、とにかく感慨深くって。すでに長いお付き合いですが、これからもよろしくお願いします。

岡本:そうですね、改めてよろしくお願いします。

この日の対談は、SIRI SIRIの原点から今までを追いかける内容となりました。13年間、伝統工芸と職人の仕事に対する熱い思いを持ち、真摯に動き続けてきたこと。それが枝さんを始めとするすばらしい出会いを引き寄せ、ブランドを成長させる糧になってきたのかもしれません。

 

文 木村 早苗

写真 伊丹 豪